その相対峙する

 −茜色、光射ス。−

 春ののどけさが次第に薄れ、
 季節は夏へを移ろうとしていたある日の夜。
 時計の針は既に12時を回り、1時を過ぎた所だった。
 何時もならば、此処、『炎』の住人は当に眠っている所だが、
 今夜は違ったようで、
 葉の眠る襖が擦る軽い音を立てて開いた。
 主人の部屋に勝手に入る者など1人位なもので、
 アンナは幽かな音を立てながら、古びた畳を踏んだ。
 布団の横に腰を下ろすと、
 中で眠る葉の手を両手で握り締めた。
 それに気付いた葉が眼を開ける。

 「・・・・・・ん・・?・・どうした・・・アンナ・・・・」

 起き上がりながら思い瞼を無理に起こし、問う。

 「・・・・・・・アンタは、此処に居るよね・・・?」

 暫し無言だった葉が泣きそうなアンナを引き寄せると、
 意図も簡単に葉へと雪崩れ込んだ。
 そのまま細い肩を抱き締めると、
 葉は音こそ小さいがはっきりとした強い優しい声で言った。

 「あぁ・・・オイラは此処に居る。何処にも行かん。大丈夫だ」

 アンナは冷え切った生白い手で葉の袷を強く握った。

 *     *     *

 あれから、時計の針がもう一回りした頃、
 髪を撫でられていたアンナが口を開いた。

 「・・・・・夢を、見たのよ・・・アンタはあたしの前を歩いていて
 ・・あたしは追い付こうと必死に走るけど、
 決して追い付かない・・・。
 それどころか、距離は広がるばかりで、
 結局アンタは見えなくなった・・・・」

 「・・・・・そうか・・でもな・・」

 葉は髪を梳く手を止め、アンナの眼を見た。

 「そりゃあオイラには無理だ。
 オイラにはアンナを置いてどっかへ行くなんて考えられん。
 寧ろ、お前がオイラを置いて
 どっか行っちまうんじゃねぇかって不安なんよ?」

 「・・・そんな事、有る訳無いじゃない・・・」

 「へへっ、だな」

 「・・・・・ありがと・・・」

 アンナは再び、縋る様にして葉に身を預けた。

 

  END

 

 新BBSにてカキコ1番乗りの華月様に捧げます。
 リク内容は『怯える嫁を慰める旦那』だったと思われます。
 在り来たりでスミマセン(滝汗)
 一応リク内容には沿っているかと・・・・・ヘヘ(壊)
 イメージは椎名林檎の『茜射す、帰路照らされど』。
 不出来な物ですが貰ってやってくださぁい>△<