−雨降りの距離−

 外は雨。
 けどあたしの手には傘はない。
 今朝はとても綺麗に晴れていたから、
 葉が持って行けと言うのも聞かずに持ってこなかったのだ。
 下駄箱の前で雨が止むのを待ていると、
 下心が手に取るように解る男たちの声。
 あたしはそんな奴等を無視し、葉を待っていた。
 雨が少しも弱まらないことに、
 待ち人が来ないことに少々苛つき始めた頃、
 やっと待ち人のご登場。

 「アンナ、どうしたんよ?」

 何時もならとっくのとうに帰っている筈の葉だが、
 今日は担任に捉まり成績や風紀のことに関して、
 いろいろと説教を受けていたようだった。 

 「傘・・・忘れたのよ」

 仏頂面をしたあたしに、葉は
 『仕方ねぇなぁ』
 と笑い、持っていたいくらか大きめの傘を広げた。
 あたしと葉はその傘に入ると、学校を後にした。

 


 大き目と入ったものの、やはり傘とは本来一人ではいるもの。
 葉はあたしを濡らすまいとしているためなのか、
 右肩が濡れている。

 「葉、あんた肩濡れてるじゃない」

 「ウェッヘッヘ、いいんよ、アンナ濡れなけりゃ」

 独特の笑い方で笑う葉。

 「ダメよ、風邪でも引いたらどうするの?」

 そう言って、あたしが掴んだのは葉の左腕。
 つかんだ葉の腕に自分の腕を絡めて、
 ギュッと力を込める。

 「アンナ!?いいんか、腕?」

 「仕方ないでしょっ。こうしないとあんた濡れちゃうし、
 風邪でも引かれたら困るもの」

 多分・・・厭、絶対にあたしの顔は真っ赤なのだろう。
 『うへへへ〜vv』と笑いようをちらりと横目で見ると、
 葉も同じように頬を染め、
 幸せそうな顔をしていた。
 そして今のあたしと葉の距離はゼロ。
 隙間などないくらいにくっついた距離が嬉しかった。

 炎に着き傘を畳むと、
 葉は少し残念そうな顔をしてあたしを見る。
 そして笑って一言。

 「毎日が雨ならいいのにな」

 ―――そしたらアンナとこうして帰れるだろ?

 「そうね」

 空は徐々に光が射し始め、丘の上には虹が架かっていた。

 

 END