転んでしまったこの手は・・・


−ぼくの味方−

伸ばされた手が髪が触れた。

「何よ」

「いんや、何となく」

休憩と言うなり首に掛けていたタオルを放り投げ、
この男は人の膝に頭を転がした。
『汗臭い』と悪態をついても軽く笑って流すものだから、
憎らしいその頬を抓ってやった。

「いへぇ」

こんなのいつものこと、とでも言いたげにも笑って頬を擦り、
そのまま伸ばされた手が髪に触れた。

「何よ」

「いんや、なんとなく」

『光ってたから』と羨ましげに弄ぶ旦那の髪をあたしは指に絡ませた。
そう、この旦那は幼い頃からいつもそうだった。
ヒトの髪を輝く目で見つめては羨ましそうに手を伸ばし、
そしてそれを口にするのがお決まりだった。

「あたしはあんたの髪の方が羨ましいわ」

今一度開こうとする口から出るものを遮って、
あたしが変わりにそれを出してやった。

「へ?」

「羨ましかったわ、昔から」

絡まる髪の感触。
どこまでも広がる空に架かる虹すら黒く見えていたあの頃に、
あたしは目を瞑った。

「あたしの髪も黒ければ、あんたと一緒になれると思ったの。
皆受け入れてくれると思ったの」

遠くを見つめて流れる雲を追うと、
頭を引き寄せられて流れる髪ごと撫でられた。

「そんなことねぇぞ。どんなでもアンナはアンナだ。
母ちゃんもばぁちゃんもじぃちゃんもお前のこと好きだぞ」

『オイラが一番だけどな』と笑う、
その揺るがない透き通る黒い瞳にあたしは引き寄せられ、
そのまま吸い込まれるようにしてそのクチビルに口付けた。

 

END

 

ん〜〜〜どっかで書いたようなネタ。
とりあえず黒いのは旦那の髪と眼。
それを羨む嫁ってことでv
因みにタイトルは柴田淳から。
苦肉の策で・・・・(策ではない)