叩き潰してみて?

 

 


−独裁者シンドローム−

 

 

この静けさが偽物でも今ある感覚が妄想でも、
嫌でもなければ気持ちよくもない、
どこへも行き場のない熱が自分の身体の中に蹲っているのは紛れもない事実だった。

勢いよく捻った蛇口が軽く冷たい水を
濁りのある透明なグラスに勢いよく注いだ。

 

「はぁ・・・」


 

喉下につく、ぬめりとした感覚を洗い流して一息吐くと、
傾いた窓から風が心地よく頬を撫でる。

グラスを置くのを音で確認してから踵を返すと、
ある程度予測していた湿り気のある熱い手が腰を支えた。

 

「起きてたの・・・?」

 

「あぁ」

 

『お前がいなくなるから起きた』
などと嬉しいことを言ってくれるこの男はいつだってあたしには甘いのに、
こういう時だけ歯向かうことを許さない、野性的な抑圧をあたしに掛ける。

あたしもそれを喜んで受け入れてしまうのだけれども。

 

「じゃあ寝ましょう」


 

否定的な言葉を吐いて腰にある手を離してから廊下を進むと、
丁度階段の前で後ろから抱きすくめられ、髪と髪の間から生温かな舌が這う。

再燃したように上がる熱が目の前の正常な世界への階段を融かした。

 

「っ・・・」

 

掴まれた下顎が持ち上がればその真下から胸元までを生温かく濡らされる。

容易に離れた腕も今では腰に巻き付き
慣れた手付きで掠れた音を立てて帯を床へと落とした。

その帯の脚に触れる様がイヤらしくてあたしは頑なに目を瞑り、
僅かな動きでそれを払い落とした。

そんなことには気づかないであろうこの男は冷たい手で胸を包み
『寒いか?』
と既に火照った身体を押し付けて浴衣の裾を寄せる。

 

「平気、よ・・っ」



 

妙なところで優しいその想いを無下にするわけではないけれど、
その温もりが布切れ一枚分でも惜しいとあたしは自然と開いた襟元に向かって葉の頭を抱いた。

あたしのこの癖は葉に抱かれるようになってから。

多分もっともっと確かで優しい安らぎがほしいから。

それなのにこの男はその腕を易々と解いてしまうからあたしは思わず声を上げた。

 

「あっ・・・」



 

それを熱い湿った舌の這うせいにしてあたしは空いてしまった野放しの手で口を塞いだ。

 


「声、抑えんなよ」

 

「だってぇっ、ホロホロたちに聞こえちゃ、ぅ・・・・」

 

「他のこと考えんな」


 

鈍く光る黒曜石のような眼で見据えられ、
出掛かった抗議の声は喉の奥でクッと詰まる。

数えるのも億劫になるほどの回数を重ねた行為から来る
用無しとなった下着を裾から脱がされる様は何度やっても未だ慣れない。

その勢いで脇腹をなぞられて
次いで内股から秘所へと入れられた指が激しく踊る。

太腿へと蜜が流れるのを外気で感じてあたしは寒気を覚えた。

 


「もうこんななんか?」

 


『イヤらしいな』
と嘲笑気味に呟く口があたしの秘所へと口付け、
優しくゆっくりとした動きで内股を伝った蜜を舐め上げ
そのまま再び秘所へと舌を突き進めた。

 


「あっ!」

 


奇妙なくらいに静まり返った廊下がイヤらしく響く水音の感覚を増幅させる。

懸命に抑えようとする声と共に指の間を縫って透明な唾液が溢れ出し、
それは白い細い腕を通って床へとゆっくりと垂れ落ちていく。

 


「なぁ・・もういいよな・・・」

 


葉はもう十分だとでも言いたげに必要以上に身体を撫で回しながら
首筋を舐めて痛いくらいに噛み痕を残す。

頷く前に冷たい手で秘所を広げられ、
熱く硬く反り立ったものを突っ込んできた。

 


「んぁっ!・・・くぅっ・・」

 

「アンナ、声出てんぞ」

 


そう言って葉はニヤリと笑う。

 


「だって、ぇ・・あんっ」

 


爪先で立つあたしの脚は震え、
葉が『痛み分けな』と肩を噛むよう指示するものだから、
あたしはそれに便乗して彼の肩が血に滲むまでに強く噛んだ。

肌蹴た浴衣には血と唾液が滲み広がっていく。

この人のモノなら染み入る血液の細胞の一つ一つすら愛しい。

 


「んっ、くぅ・・・ふっぅんっ」

 


この支配的な圧迫感と触れ合う肌が好きであたしはこの行為に恋をする。

それが彼も同じであればいい。

昂揚する気分と共にあたしは葉の口腔へと吸い取られら
嬌声を上げて真っ白な世界に飲み込まれた。

寒さが際立つ吐息の聞こえるこの廊下で
熱を持ったあたしはもう一度融けた階段を見上げた。

 

END

 

かなり昔の。
ホントはオフ活動してたときに載せようと思ったものだけど、
なくなったので。
読み返してないのでアレですが・・・あとで頑張って読み返してみます。
あぁ、恥ずかしや・・・。

どうやらシンドローム、なる言葉が好きらしい。