とくん
とくん
鼓動が聞こえた気がした
-Drops-
春の薫りと足音が淡い吐息を吐き出す頃、
あたしはブラウン管を眺めながらお茶を啜ると『普通のデートがしたい』と呟いた。
葉は一瞬首を傾げ不満を露わにしたが、
あたしが一息を吐いて次ぎの言葉を言うと表情は一変した。
「普通のデートがしたいの。
どこかで待ち合わせて出掛けるようなデートがしたいのよ」
『あ〜〜〜』とがしがし頭を掻くと、
少し考えて葉は待ち合わせの場所と時間をあたしに告げて立ち上がりその場を後にした。
待ち合わせ30分前。
やんわりとした陽があたしの髪を緩やかな速さでほんのりと温め、
やや冷たく心地好い風が薄手の桜色のカーディガンを擦り抜けた。
炎を出て暫くの所にある公園に入ると、
あの時彼が待つことへの強さをくれたあのベンチが目に付いた。
もう懐かしむことだけれども。
背凭れに触れると風より冷たくざらついた感覚が指先から伝わる。
熱くなった目頭を口元を緩めて振りほどき、
顔を上げると待ち合わせの桜の木が見えた。
一歩、また一歩と後ろ手を組近付くと、
それは年月の長さを漂わせる思いの他大きく立派な老木だった。
軽く皮の剥れる幹を大きく手を広げて抱き締めると温かく、
まるでヒトのようにとくん
とくんと声が聞こえるような気がした。
彼が声を掛けてくれるのはあとどれくらいだろう。
花びらが降り積もるまで待ってみようか。
うっすらと眼を開くと陽炎が揺れてその中に彼が見えた気がして、
あたしは再び眼を閉じて彼の名前を口にした。
END
『戦闘服を着る嫁』です。
着るのは夜で・・・げふっ!!
ってか超短文でスンマソっっ。