時には生き急ぐように

 −glace−

 朝露に濡れ、青々とした葉が仄かに揺らぐその日の朝、
 オイラは起きてまもなく寝ぼけ眼のアンナから
 修行を言い渡された。
 その言葉にオイラが悲鳴し、
 アンナからはきつい視線を貰ったのは言うまでもないことで、
 オイラは泣く泣く未だ朝靄の残る路を走りに出掛けた。
 帰るとアンナはやっぱりまだ眠っていて、
 オイラは本日一つ目の溜息を漏らした。
 いつものように掻いた汗を流して、
 いつものようにアンナと朝飯を食って、
 いつものように修行をして、
 いつものように家事をした。
 そしていつものように買い物に行こうと立ち上がり、
 顔を上げ目に留まったのは
 酒屋のおっちゃんから貰ったカレンダー。
 5月が来てすぐに捲った時に付けた12日の赤い丸が嫌に寂しい。

 ――――アンナのヤツ忘れてんのか・・・・?

 はぁぁぁぁっと本日最も深く、
 何度目かもわからない溜息を漏らすと、
 昔アンナに言われた言葉が脳裡を過ぎった。

 “そんなに溜息ばかり吐いてると幸せが逃げるわよ”

 「んな事言ったってよぉ・・・・」

 オイラは肩を落とし、
 アンナに『買い物に行ってくる』とだけ言い、
 徐々に日の長くなりつつある空の下に足を踏み出した。

 *   *   *   *

 「ただいま〜〜」

 いつもなら返ってくるはずの返事もないことに首を傾げ、
 居間を覗くと縁側に寝転ぶ彼女が居た。
 台所に荷物を置き、すぐさま向かうと、
  紫色とオレンジ色が混ざり始めた空が彼女を染め上げていた。

 「ったくこんな薄着で・・・・風邪引いてもしらねぇぞ」

 軽く華奢な身体はふわりと持ち上がる。
 階段を上がり襖を空け、アンナを降ろそうとしたら、
 するりと首に腕が回った。

 「おめでとう」

 耳元で囁かれた言葉が嫌にくすぐったい。
 目を丸くしてアンナを見れば、悪戯に笑う目とぶつかった。
 朝から吐いていた溜息に事などすっかり忘れて、
 オイラは思い切りの笑顔を見せた。

  END

 旦那様誕生日につきフリーです。
 休止宣言する前にぎりぎりで出来てて良かった・・・(切実)
 なんかこう日常的な誕生日が書きたかったらしい。
 因みに後もう一つあります。
 嫁視点で。
 隠しなのでよかったら探してみてくださいv
 『見つからね〜〜!!』って方はメール下さいv
 嫁視点は気が向いたらupします。
 これも気が向いたら書斎に置こう。