いつだってどこだってキミさえいればそこは天国
−HEAVEN−
初夏と言うには余りにもかけ離れたくらいに照りつける太陽は、
蜃気楼を作らんばかりに庭の土をじりじりと焼き付けていた。
「あち〜〜」
白いシャツの袖を肩まで捲くり、
その裾をパタパタと動かしながら
片手では少し汚れたホースで水撒きをするオイラの姿を
アンナが縁側に放り投げた脚を揺らしながら
じっと見つめていたことには大分前から気づいていた。
それに気づかぬようにしてオイラは小さな虹が出来るとそれに
『おぉっ虹だ!』
と感嘆し、高く高く、
綺麗に染まった青空に向かって水を撒くようにホースの先を強く潰した。
きゅっ、と蛇口を閉める音がすると水路は絶たれ、
先から落ちた水滴は地面に溶け、
見えていた小さな虹も消えてなくなり、
後には少々ぬかるんだ庭にオイラの履いた便所サンダルの跡が残るだけだった。
「さて、昼飯でも作るか。何か食いたいもんあるか?」
居間の畳に足を進めシャツの裾で手を拭きながら言う。
「いらない」
「お前なぁ、食わんと」
「そんなことよりも、ねぇ、今日は何の日?」
アンナが口角を上げて意味あり気にオイラの瞳を覗き込むと、
はらりと前髪が落ちて隙間から見えた白い額に
思わずどきりとこの心臓は脈を速める。
「お前の、誕生日」
「そうよ。そうしたら、何かないのかしら?」
「だってお前のほしいもんよくわからんし…つかお前持ってるし」
「あら、あたしが本当にほしいものはいつだって一つだけよ?」
誘惑、とか、妖美っつー言葉が相応しい笑みに、
感じた眩暈を暑さのせいにして
オイラは理性を一欠片だけ握り締めて、
アンナを膝上に乗せて腰に手を回した。
熱いオイラの肌にはアンナの冷たい肌が丁度良い。
「オイラでよければすぐにでもプレゼントできるが」
右手で撫でた頬は少し湿っていた。
「そう、でも今は…いらないわ。今はこれだけで十分よ」
そう言うとアンナが産毛をキラキラと光らせた、
細く白い腕を首に回してきたものだから、
溜まらずオイラは視線を絡めていつもより赤い唇を貪った。
離した唇からは、甘く切なく、吐息が漏れた。
夏はまだ、薫り始めたばかり。
END
嫁21歳誕生日小説です〜〜。
ほのぼのにしようとしたんだけども…。
何を間違ってそちらに??
とりあえずフリーと言うことで。