それは精一杯の優しさ

 

 −フレーズ−

 

 太陽がまだ空の真上にある時。
 普通の小学生なら、まだ学校に居る時。
 オイラは広い部屋の窓に近くの壁に寄り掛かって居た。
 耳にはいつも肌身離さず着けているヘッドフォンがあって、
 そこからは流れるのは大好きな音楽。
 耳に入ってくる音などそれだけで、
 目を閉じてしまえばそれこそ何も判らなくなる。
 頭を真っ白にしてそうしていたら、
 オイラに近づく気配を感じて、
 目を開ける寸前にヘッドフォンが取られた。

 「居た」

 オイラの耳から外されたヘッドフォンからは、
 大量の音が流れ出てやまない。

 「アンナ・・・」

 アンナは流れる音の根源を断ち切るようにして、
 線を引っ張った。

 「来てたんか?」

 「えぇ、さっきね」

 「そっかぁ・・・・」

 恥ずかしげに頭を掻くと
 アンナは照れとは別の雰囲気を醸し出だしながら俯いた。

 「・・・・どうしたん・・・?」

 「・・・それはこっちの台詞よ。・・・・また、虐められたの?」

 息が詰まる。

 「・・・まぁ、な」

 表情を変えずに問うアンナに、オイラは口を濁す。

 「でもあれだ、慣れちまえばどうって事ねぇよ」

 人差し指にを頬に2、3往復させながら苦く笑うと、
 アンナの手が持ち上がった。
 殴られると思い反射的に目をぎゅっと瞑ると、
 優しく耳を包まれた。
 予想外の出来事に目を丸くしたオイラが見たアンナは、
 どこか寂しげに口を開いた。

 さ み し い ?

 何も聞こえない。
 静寂が耳を包む。

 つ ら い ?

 ゆっくりと口を開いた。
 耳から離れた手はそのまま首へと回り、
 アンナの重さと温度を肌が感じた。

 「バカッ・・・」

 オイラは髪を撫で抱き締めた。
 彼女の優しいフレーズを聴きながら。

 

 END

 

 旦那がヘッドフォンをしてるのは寂しいからで、
 嫌な声を聞きたくないからだと思うんですね。
 その点嫁と類似してるかなぁと。