いつかあなたがいなくなる最期のその瞬間まで
あなたと同じものを見続けるわ
だからせめて

 





その夜、闇に滲みそうな月がキレイな弧を描いていた夜、
彼は『こわい。』そう言って一筋だけ涙を流した。
先程ぎゅうと抱き締めた頭はすでに枕に沈んでいて、
さらりと流れた髪の隙間から見えた襟足にぞくりとした。
呟いたら白く吐息が消えて声が震えた。


「ばかね」


そんなことで泣くだなんて。
そんなことで不安になるだなんて。
そんなこと


「あたしだって怖いわ」


さらりと撫でた黒髪が離れると、がしりと手首を掴まれて、
見れば彼は黒い瞳を更に黒くしていた。
ふいに引かれて縺れる身体にあたしより少し高めの体温が触れる。


「アンナ」

「すまん」


抱き締められて、
ゆっくりと瞬きをしてゆっくりと呼吸をしたら、
奥の方で骨の軋む音が聞こえた。
見えない所で手を繋いだらそこから何かが溢れそうになった。


「ばか」


瞼の裏で融けて行きそうな想いに皮肉を混ぜると、鼻の奥がつんとして睫毛が重たく揺れた。


**いつか眠りにつくその日まで



その瞬間まで指を絡めていて