あの頃のトキメキはいつまでもそのままに
−キラめく小さなもの−
抱き締めてキスをした。
もう既に慣れた行為。
けれどもそこに生じる感情には未だ慣れぬままでいる。
オイラはそう遠くない昔を思い出していた。
* * * *
アンナと一つ屋根の下で暮らし始めた頃、
そこにあったのは緊張だった。
それまで二人で過ごした時間がないわけではなかったし、
恐怖などあるわけがなかった。
ただ恥ずかしさと同居する緊張感がオイラを支配していた。
例えばアンナが風呂に入っていると知れば気が気でないし
隣の部屋で眠っていることを想像しては
悶々とした夜を過ごしたものだった。
中でも風呂上りはヤバかった。
普段は冷たい体もほんのりと温まっているようで、
それを裏付けるように白い肌はピンクに染まっている。
艶掛かった声で名前を呼ばれて、
潤んだ瞳で見つめられて・・・・・
オイラが顔を真っ赤にして俯いたことなんて数え切れない。
そんなオイラに更なる異変が起きたのはすぐだった。
食事中でも修行中でも自然と目が行くのは赤いクチビル。
何も考えずにそれを見ていた。
そしてそれが別の形を形どると
オイラは正気に戻りあわてて目を逸らす。
そんなことが続いたある日の事。
雑誌を見ているアンナのクチビルを
いつものようにじっと見る。
ふと湧いてきた感覚。
「美味そうだな・・・・・」
「何が?」
雑誌から目を外したアンナがこちらを見ている。
「え・・・・声に出してたか?」
「えぇ、はっきりと。で、何が美味しそうなの?」
「ん〜〜〜〜・・・・・・・」
返答に困ると同時に声に出したことが解り
照れ隠しに頭を掻く。
「よう解らんが多分・・・・」
アンナとの距離を縮めてクチビルに自分のそれを重ねた。
触れた感触は思ったよりもずっと柔らかくてずっと甘かった。
ふわふわとした浮遊感に包まれたようで、
なんだか時間が止まった気がした。
ゆっくりと恐る恐る離れると
予想通りアンナの赤い顔があった。
「多分な、これがしたかったんよ・・・・・」
「おバカ・・・・・気付くのが遅いのよ・・・・」
蚊の鳴くような声。
「へ・・・・?怒らんのか?」
「なんで怒るのよ。
好きな男にこんなことされて怒る女はいないわ」
横に逸らした顔は照れたような怒ったような
なんとも形容し難い顔。
「じゃあよかったんか?しても・・・・」
「〜〜〜〜〜っ!当たり前でしょ!」
アンナがオイラを睨みながら言ってくれた一言が
無性に嬉しくてオイラはいつものように笑った。
もう一度しようとしたら『調子に乗るな!』って怒られた。
* * * *
アンナを抱き締めキスをした。
もう既に慣れた行為。
けれどもそこに生じる感情には未だ慣れぬままでいる。
「アンナ、もう一度いいか?」
「ん・・・・・」
胸の奥で輝くトキメキはあの頃と変わらぬ姿を留めながら、
いつまでもそこにあるのモノなのだろう?
END
初々しい夫婦・・・・・書きたかったんですよ。
ホラ、いつもどっかしらエロいし。
結果は言わすもがなで玉砕ですが☆
所詮既に黒くなり過ぎた私には無謀過ぎることだったのです。
もっともっと初々しい夫婦が書きたい・・・・・・