やさしく
ひびいて
かえして
−眩暈−
久々に見たその姿はオイラの記憶にあるよりも少し小さくて、
思いの他はかなげだったが漂うその強さに変わりはなかった。
『380円で…』のその声に“破産させる気か?”との思いが過ぎったのも確かだが、
そんな事はどうでもイイと彼女の前へと延ばす細い腕、
全身を薄く強く包み込む白い皮膚に鈴のように響く声がすべてを吹き飛ばし、
変わりに何とも言えぬ安堵の息がこの口から漏れた。
平穏な水面にポタリと波紋が広がる、
そんな感じの温かさが辺りを包んでいて、
オイラは少しでもそれを掴もうと指を動かし名前を呼んだ。
「アンナ…」
こちらに向けた表情はなぜかアンナを幼く見せた。
聞きたいことは沢山ある。
なんでここにいるのか、何も変わりはなかったか。
話したいことは沢山ある。
ここに辿り着くまでに出会った人達のことや出来事。
オイラに酷似した男のこととそれによって自分がとてつもなく不安なこと。
そして何よりも会いたかったと言うこと。
ただ今はそんなことはどうでもよくて、
名前を呼ぶことしかできなくて、
へらりとオイラが笑ったら誰にも分からないくらいの笑みで
オイラにすべてを帰してくれた。
そしてその優しい声の優しい響きで
オイラの名前を呼んでくれる瞬間を待ってオイラは軽く手を握った。
END
帰しては誤字に非ず。
なずなとの合同お題モノ。
鬼束のアルバムのインソムニアから。