例えば。
例えばの話として世界がただ真っ白で、
足跡のつく砂だけが指の間から零れて行くことで時間の流れを知らせるとしたら、
俺はどうやってその先に跡を残すのだ
ろうか。


−プラチベ−


僅かな隙を開けた窓から薄緑色の風が白いカーテンを涼しげに靡かせ、
机上に広がる本のページを撫でるように捲りながら部屋の中を翔けた。
珍しく机に伏せる慧は少なくとも心地よいとは言えない表情で眠っていた。

「ぅ、ん…っ」

細く長い指で握り締められたワイシャツが皺を作る。
カーテンのヒラヒラと舞い軽くたつ音に足音が混じり、
それはドアの前で音をなくした。
カチャリとドアノブが回りドアが開くと一瞬強く風が吹きカーテンが大きく靡き、
二人の髪をさらうようにして流した。
未だ眉根を寄せる慧へと歩を進めると
光はそっとその肩に手を置き優しげに揺する。

「おい、滝島?」

「ん…っぅ」

「滝島っ!」

「あ…ひか、り…?」

「大丈夫か?うなされてた、ぞ」

目を開きそこに光を映すと、ごく自然と、
恐らく無意識に、慧はその腕を延ばし
光を抱き寄せ薄く仄かな温もりを持つ腹に鼻筋をつせた。

「たっ、滝島!!おいっ!やめ」

「少しだけっ…少しだけでいいんです。少しだけ、このままでいさせて下さい」

光は息を詰まらせ押し黙るしかなかった。
暫くすると光は宙ぶらりだった手をそろそろと上げ、
慧の髪をさらりと撫でその頬を熟れたリンゴのように赤くし艶を発した。

「大丈夫だ、怖くないぞ?」

「光…?」

「何があったかはよくわからんが安心しろ」

身体を離し視線を上へと向けると見慣れた笑顔が目に入り、
慧は口元を緩め目を細めた。

「ありがとうございます。あと、すみませんでした、取り乱してしまって」

「イヤっ別に。お前が大丈夫ならいい」

「えぇ。まぁまたお願いするときがあるかもしれませんがね」

「待て!それはっ」

「冗談ですよ」

自然と零れる笑みからは想いが溢れた。



外では音もなく、風が止んだ。


END

 

誕生日に頼まれて書いたものです。
他ジャンルなんですがね・・・。
とりあえずなんとなく“これを夫婦にしてみては?”
と思い名前を入れ替えてみました。
こちら。