静かにして、壊さないで

 −螺旋−

 

 「葉・・・・」

 「おぉ、アンナ。どうした?」

 「・・・・・別に・・」

 畳を擦る音を部屋に響かせながら、
 アンナは葉の後ろの窓辺に腰を掛けた。

 「いよいよね」

 「あぁ」

 「負けたら承知しないから」

 「あぁ」

 「頑張ってきなさい」

 「あぁ」

 「・・・・・・・早く、早く帰ってきてね・・・」

 「・・・・・あぁ・・・」

 俯くアンナの前に跪くと、葉はアンナの顔を覗きこんだ。

 「なぁ、この戦いが終わったらまた散歩に行こうな?
 この間は紅葉だったが今度は桜を見に行こう?」

 「こんな時に何を言って・・・・」

 「こんな時だからだろ?」

 アンナの言葉を遮った葉にはいつもの微笑みの奥に、
 何か別のものが垣間見れた。
 アンナの手を握って葉は続ける。

 「帰んなくちゃだろ?ふんばりヶ丘に。
 これからはさ、オイラたちの子供も一緒なんだしよ」

 「・・・・未亡人なんていやよ、この歳で」

 「大丈夫だって。
 お前も居るんだ、絶対に帰ってくる。約束だ」

 「えぇ」

 葉はアンナに縋りつくようにして腰に腕を回すと、
 仄かな膨らみを持つ下腹部に額を当てた。
 その奥に響く小さな鼓動に耳を澄まして。

 

 END

 

 設定としては決勝前。
 イメージとしては鬼束の『螺旋』。
 戦いが終わった後の脆くて儚くて幸せな日々って感じで。
 因みに散歩ってのはふんばりの詩のヤツですv