人込みの中で君を感じた

 

 −白の季節−

 

 人込みを歩くオイラの腕にはアンナがいる。
 夏休みに入ったある日、オイラは買い物に来ていた。
 人込みを極端に嫌うアンナはオイラが無理矢理連れてきた。
 その証に左の頬には数本の引っかき傷。
 だって仕方ねぇだろ?
 一人にすると寂しそうに耳も尻尾も項垂れてんだからよ。
 毎回毎回オイラが出掛けるたびに
 アンナに寂しい思いなんてさせられん。
 それにアンナも満更でもなさそうだしな。
 オイラは左右に揺れる尻尾とピンッと立った耳を見た。
 アンナとの距離を縮め『ウへへ』と笑った。

 分厚いガラスで出来た扉を片方の空いた手で開ける。
 店内をぐるりと見回、
 そこにお目当てのものがあるのを確認した。
 お目当てのものに近づき、アンナに尋ねる。

 「なぁアンナ。これお前に似合うと思うんだが・・・・・」

 そういってオイラが手に取ったのは真っ白なワンピースの裾。
 レースのあしらわれた胸元は
 白の細い紐で結ぶようになっている。

 「可愛いわね・・・・・・でも・・あたしには似合わないわ・・・」

 俯き細く長い尻尾をだらんとだらしなく垂れさせた。

 「そんなことないぞ?な、着てみてくれんか?」

 「でも・・・・」

 「な?いいだろ?」

 暫しの沈黙の後、こくんとアンナは頷いた。
 それを見たオイラは服を手にして、
 緩みきった頬をそのままにレジへと向かった。

   *   *   *   *

 帰路へと着くオイラの手には先程の服とたくさんの林檎、
 その他大量の荷物。
 そしてアンナ。
 疲れたのかオイラの肩に頭を乗せ、
 尻尾を揺らしながら眠っている。
 オイラは笑ってアンナを抱き直し、
 眼前に湧き出た入道雲に夏を感じた。

 

 END

 

 やっちまったよ、ネコ嫁。
 某所で影響を受け遂に書いてしまいました。
 久々?にエロのエの字もない(笑)
 健全ほのぼのですよ。
 (嫁がネコって時点で
 既に健全ではないなんてツッコミはなしですヨ)