この掌が攫われても崩されても

−砂の城−


不規則なリズムを刻む小波。
仄かな風は強い潮の匂いをさせつつ、
オイラとアンナの間を無理にでも・・・とすり抜けて、
歩く浜辺はまだまだ陽の翳ることを知らないで静かにいる。
素足で歩く砂の上はチクチクしていて、たまに浸される水はもう冷たい。
ぎゅっと握った手に感じるのはそこにある確かな熱の行き来。

「きれい・・・」

立ち止まり海を見るアンナはサンダルを脱ぐと片手に持ち、
するりと手を解くとオイラから離れて海に入る。
スカートの裾近くまで浸かるとアンナはこちらを向いて言った。

「ねぇ葉知ってる?海がこんなにアオイ理由」

『いんや』と首を振ると、ふと微笑むアンナは切なげに目を細めた。

「全てのモノの悲しみは延々と流れて、
流れ流れていって最後にはここに辿り着くの。
たくさんのいろんな形の悲しみがここに集まっているの。
だから海は深くてきれいなアオを作るのよ。」

風がアンナの髪を回せると、跳ねた水がスカートを濡らした。
手の届かない距離のもどかしさ。
オイラはズボンが濡れることも構わずに、
ザブザブと進むとやがて伸ばした手がアンナに触れた。

「んじゃあ何で空がアオイかわかるか?」

「え?」

「空にはな、たくさんの幸せがつまっとるんよ。
全ての幸せがいろんなトコを通って、
通ったトコでも幸せを与えて、
最後はその全てが空に行くんよ。
だから空は透き通るくれぇにきれいなアオなんよ」

「あ・・・」

「ほれ、アンナ。これ以上いると冷えるぞ」

オイラはアンナの手首を掴むとそこから指を絡めて握った。
波打ち際では連れ去ろうとする波が、
静かな音を立てながら足跡を掬っていった。

 

END

 

また始めました。
新たなシリーズ。
ちなみに連載には非ず。
アオって言う字は読んだ方が好きなように当てはめてほしくてカタカナ。
ってか久々に文章書いたよ・・・・(苦笑)