−誓いと約束−
いつものメンバーが炎に集まり宴会をしている時だった。
「アンナ、これ終わったら初詣行かんか?」
ゆく年く年を指差しながら葉は言う。
年越し側を啜っているあたしは葉を見て一言。
「寒いしイヤよ」
「そんな事言うなよ。久しぶりに二人で行こう」
ニパッと笑い少し甘えた声をあたしに向ける。
「っ・・・・仕方ないわね、今回だけよ」
「おお!んじゃあコート取って来るな」
いかにも浮かれた足音を立てながら葉は廊下を走り、
階段を上がっていった。
葉がコートやらマフラーなどの防寒具を持ってくると、
あたしはそれらのものを受け取り身に着けた。
そしてふと顔を上げると
目の前には掛け違えているコートのボタン。
「ちょっと葉、ボタン掛け違えてるわよ」
「ん?本当だ」
「葉君・・・その年にもなって・・・」
「オイ葉!ユルすぎんじゃなねぇか?」
「これがオレのライバル・・・・」
人に旦那に好き勝手なことを言うヤツらを
睨みつけ黙らせると、
あたしは葉に向き直り掛け違えたボタンを直しはじめた。
「まったくあんたは何時まで経っても子供なんだから」
「なんだよ〜」
ぷうっと膨れる葉が可愛くて、
葉にまだまだ子供のような部分が残っているのが嬉しくて、
あたしは微かに笑う。
コートだけでは寒いだろうと思い
あたしは葉にマフラーを巻いてやる。
ぽんっと軽く葉の胸を叩き、
あたしもマフラーと帽子を身に着け葉と共に居間を出る。
心なしか居間に残る者たちの顔が
赤かったのは気のせいだろう。
「それじゃあたまお、あとよろしくね」
「はいっ、いってらっしゃいませ」
居間に残るものたち同様に
顔を赤くしたたまおに後のことを頼むと
あたしと葉は炎を後にした。
冷えた外気に晒された肌が刺されるように痛い。
あたしと葉の吐いた息が真っ暗な闇の中に溶け込み、
やがてその姿を消していく。
「寒いわね」
「おぉ。けど、綺麗だ」
「そうね」
夜の澄んだ空気だ魅せる星と
つい先日降った雪が少しばかり積もっていて・・・・・・
「なんかさ、あん時見てぇだな」
「えぇ・・・・」
あんたとあのネコマタがあたしを救ってくれた日
あんたが大切なものを失くした日
けどあたしはかけがえのない大切なものを手に入れた日
なんか、切ないわね・・・・
* * * *
神社への道を進むに連れて人気が多くなって来る。
あたしはふとあの時の事を思い出し不安になった。
またおにがでたりしない?
たいせつなものをなくしたりしない?
こわいよ・・・・
「アンナ、手ぇ繋ごう」
あたしは葉の声に顔を上げると、
そこには手を差し伸べ
照れたように笑いながら頭を掻いている葉がいた。
温かい・・・・
あたしは葉が差し伸べてくれた温かな手を握った。
「手」
「ん?」
「あんたの手、温かいわ」
「そっか?アンナの手は冷てぇな」
「あら、手の冷たい女は嫌い?」
あたしは意地悪く笑いながら葉を見ると
『そんなんじゃねぇよ』と葉は笑う。
「ただおいらとアンナの体温混ぜたら丁度いいなって」
葉の単純で子供のような発想に『そうね』と笑う。
他愛のない話をしているうちに着いたふんばり神社で
お賽銭を投げる。
二人並んで手を合わせ、誓い、祈る。
神に?
違う。
あたしは誓うの、あたし自身に。
これからも葉ただ一人を愛し続けると。
あたしは祈るの、葉に。
これからもずっと一緒に居てくれるようにと。
離れぬようにと。
あたしは目を開き隣で待っていてくれた葉の手を再び握り、
もと来た道を戻る。
手を握ることによって
先程よりも更に短くなった葉との距離がやけに嬉しい。
「アンナは何熱心に願ってたんよ?」
「内緒」
「ちぇっ、またか。去年も教えてくれんかったよな〜」
「いつか教えてあげるわ。そういうあんたは何を願ったの?」
「ん〜〜、内緒」
『ケチ』とあたしは先程の葉を同じようにむくれて見せる。
それを葉は笑いながら受け流す。
「まぁいいじゃねぇか。そうだアンナ、公園寄ってかんか?」
葉はあたしの答えを聞くまでもなく
公園へとあたしを連れて行った。
近くにあったベンチに座ると
あたしは葉が買って来てくれたココアで体を温める。
「なぁアンナ・・・・すまんかったな・・・」
突然の謝罪。
あたしは何のことかと葉を見る。
「S.Kなれなくなっちまった。約束、守れんかった・・・」
葉は俯きあたしの手を強く握る。
あたしも葉の手を握り返す。
「別に、薄々感じてた事だから。
あの時のあんたの判断、あたしは間違っていないと思うわ。
むしろあの時蓮を見捨てていたら、
あたしはあんたを軽蔑すらしたかもしれない」
「アンナ・・・」
葉はあたしに泣きそうな顔を向ける。
だからあたしは微笑んだ。
優しく、悲しく。
「もう一つの約束は絶対に守るから・・・・絶対に」
「逃げるの?」
「あぁ、逃げよう。
そのためならおいらの持っているもの
すべてを捨てたって構わない」
あたしは葉を包み込むようにして抱くとその髪に顔を埋めた。
「約束・・・守って・・・。
でないとあたし、死んじゃうわ・・・」
再び降り始めた雪が二人を優しく、
それでいて残酷に包んでいった。
“鬼が出たなら 今度は一緒に逃げよう”
“逃げよう”
END
1月4日までフリーなのです。
よかったらお持ち帰りくだされ。
ホントはフリーにする気なかったんですけどね、
私の友Mっつんが
「フリーにしなきゃ次の部誌の表紙と目次やらせるよ」
って笑顔で言ったんで・・・。
ところでなんでお正月なのにシリアスラブ?
最後のほうはある作家さんの一場面を
少しばかり使わせていただきました。
少しずつ変えてはありますけどね。