あの時の月の光は誰のモノだったのだろうか?


 −月の光−


 新月の晩。
 
一人の少年が音もなく現れた。
 
その少年は少女の枕元に座り、
 
少女の髪に手を伸ばす。
 
掬った一房の柔らかな髪を指に絡め、
 
口付け、
 
弄び、
 
時にはその手を少女のすべやかな頬に滑らせ、
 
そのまま胸元へ這わせたりもした。
 
そうしてどれ程の時が経ったのか。
 
スッと微かに音を立てて襖が開いた。
 
其処に立っていたのは、
 
少年とよく似た、
 
しかし正反対の、少年。
 
少年は静かに襖を閉め、
 
少女の元へ歩み寄ると、
 
腰を落とし、
 
少年に向かって微笑む。
 
しかし
その黒曜石のような瞳の奥に在った、
 
血のように赤い怒りを少年は見逃さなかった。
 
少年は少女の手をとり、
その細い指に己の指を絡める。
 
そしてもう片方の手で、
 
白過ぎる
細過ぎる四肢に触れた。
 
優しく愛撫するように。
 
夜明けが近づき天(そら)も白み始めた頃、
 
少年は髪から手を離すと、
 
そっと少女に口付け、
 
音もなくその場から
 
消えた。
 
残された少年はきつく少女を抱き締め口付けた。
 
何度も何度も。
 
そしてその行為は
 
少女が目覚めてもなお続いたという。

 あの月の光は彼等の為に在ったのだろうか?

 

 END