花忍−プロローグ−
もはや日常となったその行為
肌に触れてくる男の手
肌に感じる生暖かい息
それに応えるかの様に声をあげる
声をあげれば男は喜び、舌が指先が全てが更に急かすように動く
熱くなる体とは対照的に冷えていく己の心
求めるように回した腕も、本当は何を掴みたいのかすら分からず
ただただ流されるように男にその身を委ねた
一人になった後もどこか空虚さは変わらず寧ろ増したかのような感覚
少し開いた戸から冷たい月があたしを照らしだす
こうして月を眺めるのも日課となっていた
決して届かない、憧れにも近い想い
自由を求めるのは辛いはずなのに求めてしまう
でも、たとえ自由になっても自分は何処へ行くのか
何処へ行きたいのかすら分からない
空虚な想いは更に広がり、自然と自嘲的な笑みがこぼれる
ここから出ることなど叶わないし、出てもどうするというのか
明日もまた変わらず客をとる
それが事実であり現実
変わることなどない
そう、変わることなんてないのだ・・・
諦めに似た想いを抱えながら彼女は目を閉じた―・・・