初めて世界が綺麗だと思った 
 

  −Beautiful World−
 

 仄暗い部屋の中でオイラは窓の縁に寄りかかった。
 むわっとした熱気がカラダを包み、蝉の声が耳を突く。
 目を閉じた。
 広がる闇。
 それは何処までも果てしなく続いているようで、
 一筋の光すら見えない。
 その様はまるであの頃のよう。

 

 ――――鬼だ!鬼の子が来たぞ!!

 ――――あの子に近づいてはダメよ。
     何されるかわからないからね。

 

 脳裏に過ぎった声。
 今ここにあるはずのない存在が恐ろしくて身を震わせた。

 

 「ッ・・・くぅっ・・」

 

 歯を食いしばり唇を噛むと鉄の味がする。

 

 「・・葉・・・・・?」

 

 呼ばれた声に反応し目を開けると、
 ぼやけた視界の中央にアンナが映る。

 

 「どうしたの?血・・・出てるわ・・・」

 

 白く冷たく柔らかな指でオイラの血を拭う。

 

 「なぁアンナぁ・・・」

 

 「何?」

 

 「オイラ、な、鬼の子なんよ。
  何するかわからないんよ。なぁ、逃げなくていいんか?」

 

 「葉・・・・」

 

 暫しの沈黙の後にアンナが静かに口を開いた。

 

 「・・・・確かにね、アンタは鬼の子よ?
  だけど優しい鬼の子なの。
 どんな者よりも。
 優しすぎる故に哀れで愚かで・・・・でもね、
 あたしはそんなアンタが好きなの。それじゃダメ?
 あたしじゃアンタの不安は取り除けない?」

 

 アンナはオイラの手を包みながら悲しそうに笑った。
 オイラはただ泣きそうになるのを堪えながら首を横に振った。

 

 

 

 

 あの時一筋の光をくれたのも確かに貴女でした。

 

 

END

  

A.ver  H.ver

 

 

  Beautifu World.
 前々から書きたいと思ってたもの。
 旦那・嫁・★、それぞれの話があります。
 テーマ(?)としては
 三人の世界を見る目がどんな風に変わったのか。